ジャーナリズムに関する本と映画の紹介

新聞記者になるのに、ジャーナリズム論や新聞学は然程、必要ではない。かえって、入社試験においては、現場も知らないのに観念的に物を言う人は嫌われるくらいだ。

しかし、基本的な問題は知っておくべきだ。新聞社側も、新聞記者志望なら、知っていて当たり前という傲慢な気持ちがどこかにあるように思われる。事実、私も面接の時に、「匿名報道について、君はどう思うか」と聞かれた。

第一、ジャーナリスティックな本を読むことは、記者の仕事に興味ある人には楽しいし、新聞記者の仕事内容を知ったり、新聞記者になりたい意識を高める上で役立つ。

又、原寿雄さん(共同通信顧問)や田勢康弘さん(日経新聞編集委員)は、「本を読まない記者は記者失格だ」というようなことを言っている。本を読まなくても、新聞社に入ることはできる。(同期にそういう奴は多い。)

しかし、言葉に頼り、言葉を操るのが新聞記者だ。言葉の集大成である本が大切なのは当たり前のことではないか。

映画

新聞社のデスクの人に「何で新聞記者になったのですか」と質問すると、『事件記者』を観て憧れたと答える人が多いです。

『事件記者』とは、デスクの人たちが学生の頃はやった新聞記者物のNHKドラマだそうです。

今は、「社会正義」だとか「社会的使命」などと偉そうなことを言っているデスクのオヤジどもも、キッカケは所詮こんなものです。

もちろん、映画は現実とは違うし、映画を観たからといって面接で志望動機がうまく言えることもない。しかし、楽しいし、キッカケにはなるかもしれません。そこで紹介します。

『サルバドル?遥かなる日々』 (オリバー・ストーン監督)
※エルサルバドル内戦を取材した記者の話。非常に面白い。

『海外特派員』 (ヒッチコック監督)
※第二次世界大戦直前のヨーロッパ。アメリカ人記者がいろいろな事件に巻きこまれるサスペンス物。

『レッズ』 (ウォーレン・ベイティー監督)
※『世界をゆるがした十日間』を著したジョン・リードの話。

『ザ・ペーパー』 (マイケル・ダグラス主演)
※新聞社の一日を描く。皆カッコ悪いのが現実的かも。

『フロントページ』 (ビリー・ワイルダー監督)
※新聞記者の特ダネ競争のコメディ。

『紳士協定』 (エリア・カザン監督)
※ユダヤ人差別のルポを書くために、記者がユダヤ人のふりをする。そこで受けた差別。ニュージャーナリズムの手法。

以下は、新聞記者が何かに巻き込まれる映画。

・『ローマの休日』
・『或る夜の出来事』 (フランク・キャプラ監督)
 『ローマの休日』の原型。
・『甘い生活』 (フェリーニ監督)
・『市民ケーン』 (オーソン・ウェルズ監督)
 ある新聞王の盛衰。
・『慕情』 (ヘンリー・キング監督)
 恋人の新聞記者が朝鮮戦争で死亡する。
・『アラビアのロレンス』
 ロレンスのアラビア人の溶け込み方は取材に通じる?

ドキュメンタリー(ジャーナリスティックもの) 
・『ゆきゆきて神軍』 (原一男監督)
・『ぼくら、20世紀の子どもたち』 (カネフスキー監督/ロシア)
・『教室の子供たち』 (羽仁進)
・『忘れられた子供たち〜スカベンジャー』 (四ノ宮浩)

以下、紹介。分類は必ずしも明確ではない。

新聞記者とは?ジャーナリストとは?

・『未来のジャーナリストたちへ』 (マガジンハウス) 黒田清
 ※11人の著名なジャーナリストによるジャーナリスト志望の学生向けの講演録。
・『共同通信社会部』 (講談社+?文庫)
 ※社会部志望の人へ。少々読むのがしんどい。
・『記者志望』 (築地書館) 斎藤茂男
 ※なぜ、この人が記者になったかなどが書かれている。
・『夢追い人よ』 (築地書館) 斎藤茂男
・『職業としてのジャーナリスト』 (朝日文庫) 本多勝一
 ※私は、この人をどうしても好きになれないのだが、やはりすごい。
・『事実とは何か』 (朝日文庫) 本多勝一
 ※報道とは? ルポとは? 論理のこねくり回し。
・『事実が私を鍛える』(太郎次郎社) 斎藤茂男
 ※上記の本など、この人の本は岩波書店から全集で出ている。少々高い。
・『それでも君はジャーナリストになるか』 (晩聲社) 原寿雄
 ※正統派。読むべし。
・『新聞記者を考える』 (晩聲社) 新聞労連編
 ※新聞、記者の問題点をつく。
・『ぼくが世の中に学んだこと』 (ちくま文庫) 鎌田慧
 ※氏のルポライターになるまでの半生。

ジャーナリズム論

・『いま新聞を考える』 (日本新聞協会研究所)
 ※記者クラブ問題、報道手法など日本の新聞の抱える問題を網羅的に取り上げている。オススメ。
・『新聞記者の処世術』 (晩聲社) 
 ※現代のジャーナリズムの問題を取り上げる。読むべし。
・『政治ジャーナリズムの罪と罰』 (新潮社) 田勢康弘
 ※政治部志望の人に。
・『世論』 (岩波文庫) W.リップマン
 ※ジャーナリズム論の古典。難解。読み切るには、かなりの根気と努力が必要。
・『国際報道の現場から』 (中公新書) 近藤紘一、古森義久

ルポルタージュ

・『世界をゆるがした十日間』 (ちくま文庫、岩波文庫など)
 ※ロシア革命のルポ。ジョン・リードや『中国の赤い星(ちくま文庫)エドガー・スノー』がルポの古典と言われているが、いきなり読むのは、キツイのじゃない?
・『サイゴンのいちばん長い日』 (文春文庫) 近藤紘一
 ※ヴェトナム戦争の時のサイゴン陥落のルポ。非常に面白い。
・『サイゴンから来た妻と娘』 (文春文庫) 近藤紘一
 ※大宅壮一賞受賞。これまた、面白い。
・『目撃者』 (文春文庫) 近藤紘一
 ※彼の記事、ルポ、評論集。

他にも、
・『妻たちの思秋期』 (講談社+?文庫) 斎藤茂男
 ※彼は、従来、新聞記事にならないとされていたものを新聞記事にした。人に対する飽くなき興味。
・『自動車絶望工場』 (講談社文庫) 鎌田慧
 ※自らトヨタの季節工になっての体験取材。
・『追及』 (悠飛社) 山本博
 ※リクルート事件などの調査報道。尚、ここ数年、入社試験で「調査報道をやりたい」という人が多いとのこと。
・『ハーレムの熱い日々』 (講談社文庫) 吉田ルイ子
 ※将来、フリーに憧れている女性は絶対に感動するはず。
・『自分をさがして旅に生きてます』 (講談社文庫) 吉田ルイ子
 ※元気づけられる。
・『ちょっとピンぼけ』 (文春文庫) ロバート・キャパ
 ※キャパだよ、キャパ。→キャパの伝記『キャパ(上・下)』(文芸春秋)リチャード・ウィーラン
・『中国の旅』 (朝日文庫) 本多勝一
 ※私にとっては、何かとケチのつけたくなる本だがノ。
・『戦場の村』 (朝日文庫) 本多勝一
 ※ヴェトナム戦争ルポ。
・『ルポ戦後日本 50年の現場』 (講談社文庫) 鎌田慧
・『もの食う人びと』 (共同通信社) 辺見庸
 ※読み物としても最高に面白い。
  →続編『反逆する風景』(講談社)
  辺見庸ノ共同通信記者。『自動起床装置』(文春文庫)で芥川賞受賞。他『ハノイ挽歌』(文春文庫)。